携帯電話で大声でしゃべってるおばちゃんがいた。
どうも親類が亡くなった知らせを受けたらしい。
立ち聞きしたいわけではないが、向こうからこちらへ声を飛ばしてくるので仕方なく聞いていると、
葬儀の段取りの話をしているようだ。
「親をそんな扱いする奴は柱で頭打って死による」
「なんで長男のあんたが下手(したて)にいかなあかんのや」
「そんなもんはアホや」
「気が向いたときにお線香でもあげておけば、あんたの肩の痛みも取れるかもしれんで(笑)」
…人が亡くなってるという割には聞こえてくる言葉にしんみりした感じがない。
生前のおつきあいがどんなだったかは知らないけど、そして電話口の人が悪いのか、親戚の人が悪いのか、亡くなった人が悪いのか、おばちゃんが悪いのか分からないけど、
とりあえず僕は、このおばちゃんが静かにしてほしい。
と思った。
これからお葬式のこととか、中陰のこととか、連絡や諸届が押し寄せるから、そして面倒なことは兄弟で押し付け合うから、お金に関することもあるだろうから興奮して喋ってるんだろうな。
こういうことを自分事として受け止めると、○○について準備しとかなあかんな、とか、もっと知っとかなあかんな、自分もそういう認識だったな、と反省する。
でも僕は、このおばちゃんは静かにしてほしい。
耳に痛いから?不安を呼び起こすから?なぜなんだろう?いや、単にうるさいから?
そしてかなり時間が経ってから、他の人(僕含む)に聞こえているということに気づいたらしく、おばちゃんはその場をはなれていった。
もっと聞いとくべきだったかと思いつつも、やっぱり静かになって安心した。